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2008年3月18日

"シスタチンC"で腎機能障害を早期発見
透析移行を減少させ、医療費削減に貢献


臨床検査機器・体外診断医薬品メーカーのアークレイ株式会社(本社:京都市中京区、社長:土井 茂)は、「免疫反応測定装置スポットケム IM (SI-3510, SI-3511)」1)の新しい専用試薬としてスポットケム i-Pack CysC を3月6日から発売いたしました。

スポットケム i-Pack CysCは、血液(血清・血漿)を用いて腎臓の機能を検査する試薬で、シスタチンCとクレアチニン2)を同時に測定できます。シスタチンCは、全身の組織から分泌される低分子量のタンパク質で、その分泌は年齢・性別・筋肉量・体位・運動・日内差などの要因にほとんど影響されず、一定に分泌されます。その為、腎機能障害を正確に推定できるマーカーとして知られています。

腎機能を知るにはクリアランス試験3)が理想的ですが、この試験は患者負担が大きく、操作が煩雑であるという欠点があります。また、簡易に腎機能を推定する測定方法として用いられるクレアチニン測定は、初期障害を十分発見できないという欠点がありました。
一方、シスタチンCはクレアチニンに比べ、軽度の腎機能低下でも血中濃度が上昇することが知られています。
本システムと試薬を用いることで、一般の診療所でも簡単に初期の腎機能障害を発見することができるようになります。

2006年末の社団法人日本透析医学会の調査によると、国内の透析患者は26.5万人で、毎年1万人ずつ増加しています(導入開始患者 3.6万人、死亡患者 2.4万人、増加率4-5%)。腎機能ステージ(資料1参照)の軽度障害及び中等度障害の段階では、食事療法や糸球体保護作用を有する薬剤投与での治療を行うことで病期の進行を食い止めることが可能です。つまり、腎機能障害を早期発見し、治療を開始することで、透析導入を阻止できる確立が高くなります。腎機能障害の早期発見のためのマーカーとしてシスタチンCは有効であり、今後、需要の増加が見込まれます。


免疫反応測定装置スポットケム IM (SI-3511)(左)とスポットケム i-Pack CysC(右)

語句説明

1) 小型の免疫反応測定装置。感染症診断に有効なCRPやASO、糖尿病の管理指標として不可欠なHbA1c、腎機能マーカー シスタチンCの即時検査が可能です。操作が簡易で短時間に結果が得られるので、一般診療所など院内で多く使用されています。試薬は個包装されており、無駄なく必要数のみ検査が可能です。
2) 血液中に存在する代謝産物の一種。本来は尿中に排出されるものですが、腎機能が低下すると血中に蓄積されます。よって、血中あるいは尿中のクレアチニンを調べることにより、腎機能が正常かどうかを検査することが可能です。
3) 体内で代謝されず尿中に排泄される特性をもつマーカーを投与し、尿および血中の成分濃度変化を検査する試験。正確性は腎機能検査中最も高いが、静脈注射によるマーカー投与や蓄尿、採血が必要なため、患者への負担が大きくなります。(資料2参照)

<資料1.腎機能ステージ別の腎機能検査陽性率>
腎臓学会
ガイドライン
腎機能
陽性率
備考
シスタチンC
24hrs クレアチニンクリアランス
β2マイクロ
グロブリン
クレアチニン
尿毒症群 GFR <10
100%
100%
100%
100%
 
腎不全 GFR 11-30
100%
94%
100%
100%
透析導入
腎機能重度障害群 GFR 31-50
92%
92%
76%
72%
クレアチニンで検出可能
腎機能中等度障害群 GFR 51-70
85%
63%
33%
26%
シスタチンCで検出可能
腎機能軽度障害群 GFR 71-90
22%
3%
0%
11%
腎機能正常群 GFR 91<
2%
3%
3%
4%
 
*Kazama JJ., Nephron.91:13-20,2002
糸球体濾過量(GFR)30以下では、もはや腎機能障害の進行を阻止できず、必然的に透析に向かう。

<資料2.糸球体濾過量(GFR)評価法と内因性物質の比較>
糸球体濾過率評価法
測定物質
腎外性因子の影響
汎用性
正確性
保険点数
備考
腎クリアランス試験
(外因性物質)
・イヌリン
・チオ硫酸
 ナトリウム
なし
×
150点
日常ルーチン検査に未使用
クレアチニンクリアランス (内因性物質) ・血中/尿中
 クレアチニン
尿細管のクレアチニン分泌、
蓄尿誤差
0点
日常ルーチン検査に使用されるが煩雑
血中内因性マーカー ・クレアチニン 筋肉量
11点
 
・β2-マイクロ
 グロブリン
悪性リンパ腫、
ミエローマ悪性腫瘍、自己免疫性疾患
120点
日常ルーチンに使用
される
・α1-マイクロ
 グロブリン
肝機能障害、
ミエローマ
150点
可能
・シスタチンC ほとんどなし
130点
 

1.名称 スポットケム i-Pack CysC
2.発売日 2008年3月6日(木)
3.仕様
  測定装置
  測定対象
  測定項目
  測定原理
  有効期限
  貯   法
  保険点数


スポットケムIM(SI-3510, SI-3511)
血清・血漿
シスタチンCおよびクレアチニンの測定
ラテックス免疫比濁法(シスタチンC)、酵素比色法(クレアチニン)
8ヶ月
冷蔵(2~8℃)
130点

4.販売価格 スポットケム i-Pack シスタチンC (1箱 25個入り) 36,750円(税込み)

これらの商品は「アークレイマーケティング株式会社」(*)が販売します。
*「アークレイマーケティング株式会社」はアークレイの日本国内の販売統括会社です。