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世界初のヘモグロビンA1c分画測定装置
HA-8110
1979年(昭和54年)夏頃のこと、新機種の開発テーマが決定され、機械系・電気系・ソフト系技術者による6~7名の開発チームが編成されました。開発テーマは、積水化学工業㈱中央研究所が大阪市立大学医学部と共同研究していたヘモグロビンA1c(HbA1c)の分析カラムを用いた測定器の開発でした。当時、測定器が非常に高価で扱いが難しい上に、測定に24時間もかかるため実用的でなかったHbA1cの測定を、専門知識を持たない検査技師の方でも、日常の臨床検査機器として、単一項目の専用測定器として使ってもらえる測定器をつくるというのが開発のコンセプトでした。
HbA1cはヘモグロビン(タンパク質)がグルコース(糖)と結合した糖化タンパクの1種で、全ヘモグロビン中に約4~15%が含まれます。過去2ヶ月間の平均血糖レベルを反映するため、糖尿病の診断と治療に不可欠な検査項目の1つです。
HbA1cを測定するには、ヘモグロビンを様々なヘモグロビンに分離して比率を演算する、いわゆる分画定量が必要で、液体クロマトグラフィー(Liquid Chromatography、略してLC)法で測定するのが一般的でした。
Mikhail S. Tswett
(1872-1919)
液体クロマトグラフィーの歴史は古く、ロシアの植物学者 Mikhail S. Tswett(1872-1919)が、植物色素(クロロフィル)の成分を、石油エーテルと共に炭酸カルシウム層に通し、色素成分が分離したことを発見したことから始まったと言われています。更に高速化された高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、略してHPLC)は、いまや分離分析に無くてはならないものとなっています。
開発当時、HPLC自体は汎用装置で市販されていましたが、非常に大掛かりなシステムな上、使用条件を常に維持するには熟練したオペレーターが必要なため、大学の研究室や分析を専門にしている企業や一部の検査センターでしか使われていませんでした。また流量・圧力・温度・分離カラムの状態等の微小な変化でも分析結果が大きく異なるため、臨床現場での測定のような定量試験には不向きとされていました。
このような状況の中、どうすればHPLCを臨床現場に受け入れてもらうことができるかを当社の技術陣が日々検討し、その鍵はシステムの動作安定性と価格にあると結論付けました。
HPLCは送液時の圧力が50Kg/cm2以上(水深で表現すると水深500mと同じ圧力)と非常に高くなることもあるため、高圧の送液ポンプ・高圧バルブ・高圧ダンパーなど、通常の自動生化学検査装置ではあり得ないユニットを多く組み込む必要がありました。これらを市販品で揃えると、ユニットだけで何千万円ものコストがかかることになります。そこで、それまでに培われたHPLC技術を再度掘り起こし、各ユニットを社内製作することにしました。デッドボリュームが小さくて直線性のよいフローセル光学系の開発、脈動が少ない高圧ポンプの開発、高圧インジェクションバルブの開発、ダイナミックレンジの広い浮動小数点演算ソフト、登場間もないマイコンシステム制御など、クリアしなければならない技術上の問題点は、どれも開発チームにとっては初めてのものばかりでした。それらをひとつひとつクリアし、高品質でありながら低価格なユニットを完成させ、一般の病院や検査センターで受け入れられる性能と価格を実現させました。
こうして、機器開発は当社が、分離カラム開発は積水化学工業が行い、世界で初めてのHPLC搭載HbA1c分画定量装置HA-8110が誕生したのです。
最新機種 アダムス A1c HA-8190V